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環境とリーフタンク

1999年においては、海水魚店に出回る生体のほぼ100%が天然の個体です。日本では主にインドネシアや沖縄の海で採集されたものが業者を通じて流通されます。

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捕獲の現状

海水魚の採集は追い込み漁や巻き網、定置網、釣り、手網等を用いて専門の業者によって採集されます。最近ではリーフタンクに用いられるような小型の魚達はほとんどが1匹ずつ手作業で採集されています。狙った魚をできるだけ傷つけずに採集するには手網がもっとも適しているからです。
数十年程前までは沖縄でも青酸カリや塩素などの毒物を使って海水魚を採集していました。当時のことを知る海人(沖縄で漁師のこと)の話では、青酸カリは直径3cmほどの球形の丸薬で、すり鉢で粉末にすりつぶして、それを水に溶いて使用したということです。洗剤の空き瓶等に毒液を入れ、魚が逃げた穴に毒液を吹きかけると、魚はものすごい勢いで穴から飛び出してきて、待ちかまえていた網に入ってしまいます。なかには、粉末のまま手に握りしめて洞窟のような穴に入って薬をばらまいて大量に魚を捕る強者もいたそうです。
当然魚へのダメージは大きく、1週間ほどすると鰭が溶けてきたり、目がただれたりして、生存率もとても低かったようです。
毒物を使って魚を捕ることは、魚に対してだけでなく周囲の生物を全て殺してしまいます。サンゴ礁の魚が住処とする穴はとてもきれいです。魚がいない穴は堆積物がつもり、壁面に住む生物も多様性がありません。人気のある穴はたくさんの魚達が集まり、壁は見事な石灰藻といろいろな種類の付着生物に覆われています。銛を使ってそこの魚を捕っても、しばらく時間をおくとまた別の魚が入っています。海人はこのような魚の家を、自分だけが知る秘密のポイントとして他にあかしません。
ところが一度毒薬を使うと、その後長期にわたってその穴は付着生物が全然いない真っ白な壁に変わってしまい、ほこりのような堆積物がつもり、魚が全く寄りつかなくなってしまうということです。
サンゴ礁の海で手網をつかって傷を付けずに魚を捕ることは、非常に難しく、また大変な作業です。日本の人件費では割が合わず物価の安いフィリピンやインドネシアから輸入される魚が多数をしめています。
造礁サンゴ(ハードコーラル)は主にインドネシアからサイテス(輸出許可証)を得た個体が日本に輸入されています。
ソフトコーラルは特に条例による商取引の規制はなく、インドネシアをはじめフィリピン、沖縄等から輸入されています。沖縄からは養殖した個体も出回るようになりました。

環境問題

天然からの採捕は、ともすれば乱獲による資源の減少、環境破壊につながります。
自然の大切さを学ぶ最高の教材となるべきリーフタンクホビーが、皮肉にも自然破壊の一端を担うようなことがないように、充分な配慮が必要だと思います。 国際的にはハードコーラルはワシントン条約によって商取引が制限されています。そのほか国によって様々な条例によって保護されています。 健全な海の再生産能力、自然治癒力は思いのほか強いものです。
例えば健全な海では多くのコーラルは、大きな群落を作って隙間なく海底を覆い、常に隣のコーラルとの熾烈な陣地争いにしのぎを削っています。採集によってそこにぽっかりと穴があいても、周囲の個体がここぞとばかりにその穴を埋め尽くして見る見るうちに元に復元してしまいます。ちょうどうっそうと繁る森の木のようなものです。
ただし乱獲はいけません。上の例でいえば群落ごと取り尽くしてしまえば、群落はもう元に戻ることが出来ません。採集に携わる業者は充分にその点をわきまえる必要があると思いますし、業者やアクアリストはそれらが天然の貴重な命であることを充分に認識して、確かな知識をもって大切にする責任があると思います。

養殖 〜無脊椎動物の養殖〜

C.P.Farmでは、最近人工的に養殖した個体を販売するようになりました。
淡水の熱帯魚の大半が人工養殖の個体なのに、海水魚では養殖個体が出回らない最大の理由は海水魚の繁殖が非常に難しいからです。総じて淡水魚は海水魚に比べて卵が大きく、そのかわり卵の数は少ない傾向があります。淡水魚の稚魚はより発達して親に近い形になってから孵化して、最初からアルテミア(ブラインシュリンプ)の養成を食べられるほどの大きさに育っていて抵抗力も強いのです。これに対して海水魚は平均で卵の直径が0.9mm程と小さく、遊泳力もままならないようなおおよそ原始的な段階で孵化してしまいます。そのかわり何十万という膨大な数の卵を生みます。ほとんどが他の生物の餌となって、みずから周囲の生態系の糧となりながら、その中のごくわずかの精鋭が生き延びる事が出来ます。海水魚の繁殖のこのような作戦は人工養殖にとっては不利になります。孵化してすぐの初期の段階を乗り越えることが今の技術では非常に難しいのです。
海水魚も種類によっては養殖に非常に向いている種類もあります。クマノミなどはその典型で、2.5mm(後で確認)ほどの大きな卵を少量生み、なおかつ卵が生まれてから約2週間は親が卵の面倒を見て、稚魚は卵の中で充分に成長してから孵化します。水産養殖の技術を用いて、100%に近い生存率で繁殖を成功させることが出来ます。
食用の魚では養殖技術は確立されていて、食べる魚も観賞魚も同じ魚です。肝心なことは魚種の選定で、たくさんの鑑賞に適した海水魚のうちで、大きな卵を生む人工養殖に適した魚をピックアップすれば養殖は不可能ではありません。
日本でも人工養殖の海を知らない海水魚が市場に出回る日もそう遠い先の話ではないでしょう。

無脊椎動物の養殖

トサカ類は元となる大きな親株を海から採取して、それをナイフで小さく切り分けそれぞれを糸で石にくくりつけて活着を待ちます。こうすると一つの親株から百以上の子株を得ることができて非常に効率的です。子株は2週間から1ヶ月ほどで岩に活着します。ウミキノコやウネタケ、ハナズタ、ウミアザミ等も同じような切り分け活着で養殖が可能です。
ハードコーラルではミドリイシの仲間は成長が早く、愛好者のタンクで大きく育った個体がホビースト同士で交換されています。
養殖個体は天然採捕の個体に比べて、総じて飼育しやすく、また安定供給が出来るということは、流通全般にわたってあらゆる部分でたくさんのメリットが生まれます。
なにより自然を傷つけずに、人間の技術の力で自然の大切さを伝えることが出来るということはすばらしいことです。一日も早く養殖個体だけでリーフタンクが組めるような日が来ることを願ってやみません。

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