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珊瑚の切り分け増殖

C.P.Farmでは数年前から様々なサンゴの養殖方法について研究を重ね、現在では多数の品種について効率的な養殖方法を確立することが出来ました。 今回はそれらの内ホームアクアリュウムでも比較的容易に行うことが出来る、株分け式の増殖方法について紹介したいと思います。
この様なノウハウが広まってホームアクアリュウムで増やしたコーラルをホビーストの間で交換出来るようになれば、貴重なサンゴ礁の命を大切にするという観点から、またコーラルの生態をより深く理解するという事からも良いことであると思います。
是非チャレンジしてみて下さい。

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株分け式増殖方法の基本

株分け式増殖方法とは、大きなコーラルを小さく分割して、それを子株としてライブロックに活着させる方法です。この方法で増殖が可能なコーラルには、ソフトコーラルではトサカ類・ウミキノコ類・ウミアザミ類・ツツウミズタ・スターポリプ等があげられます。またハードコーラル(造礁サンゴ)ではミドリイシ類・ハナヤサイサンゴ類・トゲサンゴ類等が上げられます。
ソフトコーラルを飼育していて、カニやシャコ等にコーラルの枝を切り落とされたという経験をお持ちの方は少なくないでしょう。カニやシャコが何故ソフトコーラルをハサミで切るのか、その理由は良くわかっていませんが、切り落とされた小枝はライブロックの隙間に落ちて、しばらくするとその場に活着して、新たな株として成長していく事が頻繁に見受けられます。ランナーを伸ばすことのないトサカ類などが、広範囲に群落を拡大して行く上で、これらカニ等の生物による切断はソフトコーラルの繁殖方法の内でかなりの比重を占めているものと思われます。またミドリイシ等のハードコーラルが、波浪によって枝が折れ、その枝が海底に活着して新たな株として成長することは、想像に容易い事でしょう。
これらのサンゴの無性生殖方法を人為的に執り行う事が、株分け式の増殖方法というわけです。

増殖の実際(ウミキノコの株分け養殖)

ウミキノコの仲間は、株分け式増殖の入門種として最適の種類です。 容易かつ短時間で増殖を成功させることが出来、また切り分け時のストレスにも強く、基本的な環境が整っていれば途中で死んでしまうような事はほとんどありません。下記に増殖の実際について手順に基づいて解説します。

1.親株の選定と切断

もととなる親株は、元気にポリプを伸ばしている個体であれば大きさの大小は関係ありません。
切断にあたっては良く切れるナイフを用意します。

ウミキノコは身体が柔らかくとても切りやすいソフトコーラルですが、ヤナギカタトサカの仲間やトゲトサカ等では、体中にハードコーラルの骨格に相当する、1〜5mm程の炭酸カルシウムの骨片が沢山入っていて、切れ味の悪くなったナイフでは容易に切断することが出来ません。子株の切断によるストレスを最小限に押さえる意味でも、良く切れるナイフでスパッと切ることが大切です。
切り分ける際の子株の大きさは、小さいほどストレスに弱く、大きくなるほど丈夫で後の行程も容易になります。ウミキノコの場合では、身体の部位によってもストレスに対する耐性は異なります。笠の部分は切り分けのストレスに強く1cm角のサイコロ状に切り分ければ充分に成長させることが出来ますが、茎の部分は3cm以上にした方が無難でしょう。

無難な切断方法としては、写真の要領で傘部と茎部に分ける方法でしょう。
傘部の下にナイフを入れて、茎部と傘部を切り分けます。
傘部は1cm以上の大きさで賽の目状に切り分けて子株として用いてます。

傘部を賽の目状に切り分けて子株とします。
この際に子株の角を落として丸くしておくと、早くウミキノコらしい形に育てることが出来ます。

茎部はそのまま水槽に戻してあげれば、時間とともに切断面は修復され、そこから再びポリプが出てきます。さらに時間が経てば上端部は傘の形に広がりはじめて、最終的にはもとのウミキノコの形に戻ってしまいます。

2.切り分けた子株の処理

水質環境が非常に良いタンクであれば、子株はそのまま石に固定してもほとんどの場合うまく活着をはじめますが、水質が完璧とはいえないタンクまた、よりデリケートなコーラルについては、石への固定の前にそのままの状態で飼育して傷口が修復されるのを待ってから固定作業に移れば、成功率も高くなります。
その理由は、傷口部は腐敗しやすく常に新鮮な水流で傷口を洗い流すことで修復を早めることが出来るのですが、石への固定によって水流の滞りが出来ると腐敗部に水カビ等が繁殖し子株全体に及び溶けてしまうという訳です。
傷口の修復を行う際のコツは「子株の身体全体に水流を与える」という事に集約されます。強い水流は必要ありませんから、ゆっくりした流れを常に与えてあげる事が大切です。これは、実際にやってみると頭で考えているより難しいことです。例えば横からの水流をあてると、子株は非常に軽いのですぐに流されてしまうし、特にトサカ等の伸縮が激しい種類では、伸び縮みの都度、水流に対する抵抗が異なり、結局流されて一カ所にかたまってしまうようになります。これではまんべんない水流とは、ほど遠い状態になってしまいます。
また、ガラスのような板の上に子株を直接置くのも、良くありません。子株の身体が板と密着して、その密着部から腐敗が広がることが多々あります。
従って、ザルや網の様な物に子株を入れて、下から吹き上げる形で水流を与えたり、針に通した糸で子株を数珠繋ぎにして、水槽内に配置する方法などが今のところ良い成績を上げています。

3.石への固定・活着

傷口の修復が済んだ子株は、石への固定を行います。
C.P.Farmでは以前は糸や針金を用いて子株を土台岩に縛り付けていました。

糸で縛り付ける方法は特にミドリイシなどのハードコーラルには有効な方法で、活着が済むまでの間、子株が動かないようにしっかりと縛り付ければ、非常に高い確率で活着を成功させることが出来ます。
土台岩にしっかりと糸で固定されたミドリイシ。種類や環境によって活着速度は異なるが、およそ2ヶ月ほどで完全に活着します。

子株が長期間にわたって動かないように固定するためには、強い張力をかけた状態で縛り付ける必要があるわけですが、身体の柔らかいソフトコーラルではすぐに糸や針金が子株の身体に食い込んで、張力が失われ子株が土台岩の上でぐらつく形となってしまい、高い成功率は望めません。

リーフロックの針に子株を刺して固定した状態。この状態で3週間ほどで活着が完了します。

また、ソフトコーラルの種類によっては身体が非常に柔らかかったり、大量の粘液を出したりする種類も多く、それらの子株を土台岩に縛り付けることは難しく、また糸や針金などで縛り付けることは、個体を圧迫することとなり、子株に過剰なストレスを与える結果死んでしまう個体もありました。 このような背景から作られたのが、ソフトコーラル活着用のニードル付リーフロックです。

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